クモ然草

最初は鬱憤書き綴るだけだった。途中で飽きた。じゃあこれからはひたすら雑記にしよう。そんなクモさんのクモさんによる誰かのための怪文書版徒然草

社会で最も不名誉な逃走迷走メビウスループ〜準備編〜

前回からの続きです。

かくして私は社会的にも倫理的にかなり最低な手で現状から逃げる事を決めたのですが、その瞬間少しだけ考えました。

考えたと言っても逃走の中止をではありません。それを考えるのはもう数日だけ先です。

とりあえず頭によぎったのは、「何が必要になり、それを揃えるのに何日かかる?」でした

そう、カッとなって逃走を決めた割に思考は極めて冷静だったのです。真に冷静なら、この行動のデメリットも正しく算出して中止を提言できたと思うので、多分熱すぎて一周回って冷たく感じたんだと思います。

それで月曜の夜、家の布団にくるまりながら何が必要で何をしておくべきでそれには何日を要するか(=いつ出るか)を入念に考えておりました。何せ実際に行動を起こせば後戻りは即ち失敗、忘れ物を取りに戻るなんて可愛らしい行動は絶対に取れません。つーか、数日でそれやったらいよいよ私は首を吊ると思います、、、恥ずかしいもん。

そうして必要な物などを決めたら、次は実際に準備期間です。

火曜日、朝一で会社に風邪で休むと伝えました。勿論仮病です。

必要な物を揃えるためにとりあえず…昼までパチンコ打ってました。エヴァ打って5千円勝ちでした。

普段パチンコ打たないのになんか打ちたくなったんですね。その時は首を傾げてましたが、今日理由がわかりました。あとで書きます。

昼からはユニクロで安めの服を買い、銀行からは引き降ろせるだけ金を引き落としました。しめて現金にして30万。借金苦で逃げるわけでもなく踏み倒す気もないので返済はちゃんとする都合、実際に動かせる金は見た目よりもそこそこ少ないかなと思い、念の為に切り札を用意しました。可能なら絶対に使いたく無い切り札、手詰まりになりにくくするために手詰まりを早めるジョーカー、無人契約機でカード作るアレです。あんま言いたくないけど3社作っときました。契約するだけで引き下ろさなきゃデメリットないからセーフ。は詭弁ですね。

その日は夕方ごろ早めに帰って何食わぬ顔で飯食って寝ました。なかなか寝付けない上に悪夢を見たような気がします。

水曜日、引き続き仮病で休みました。2日連続で休むことをあまり良しとしない上司から小言を言われましたが、いつも通りの謝り口調の割に心は少し躍っていました。ちなみに会社の携帯持ってたので、火曜水曜とお構いなく電話はかかってくるし、こっちが体調悪い(大嘘)から休んでると言ってもお構いなしにあれはどうなってる、これはなんでこうなんだと怒鳴られます。こういう業界だから嫌いになったのです。確認したら間に合ってなかった納期、あらゆる問い合わせに対する回答を木曜に収束させました。今日の事です。多分てんやわんやになってるってかなったとは思いますが、最早知ったこっちゃないです。

で、水曜日なんとか有給取った私は…昼までパチンコ打ってました。千円負けでした。まぁだいぶ取り返してはいたので良いかなと。この時点でなんで打ちたくなったんだ…?と考えてました。

その後、所謂書類集めです。多分要らないとは思うけど、もしかしたら、ひょっとしたらどこかで腰を落ち着けてアルバイトでもするかもしれない。そうなったら何処かのアパートでも借りなきゃいけない。そんな失踪者特有の思考をしてました。ので、多分そういう時に必要になる住民票の写し、貰っときました。学生時代アルバイト先に提出するのに免許持ってなかったから身分証の用意が妙に面倒な覚えがありましたが、今や免許見せるだけなので意外と簡単なんだなぁと感心したり。

その後、ある意味前日の大一番、会社に退職届ぶち込む段です。

これに関しては朝一くらいで発覚してくれないと困るので、21時過ぎて会社から人が居なくなるのを待ち、鍵を開けて社長の机の上に封筒置いて、私物とか必要そうなものを回収して、机の中に最早私のものではない携帯をそっと忍ばせてから会社の鍵を閉めて鍵を外付けのポストに放り込んで帰りました。

実際のところ発覚後会社でどうなったか、実家に連絡行ったのかなど不明点は多いのですがぶっちゃけ好き好んで詳しく聞きたい内容でもなく、不必要に連絡取りたい立場でもないので今のところ聞かないようにしてます。そのうち親のラインをブロック解除して聞いてみようとは思ってますがねぇ…大体想像はつくような、つかないような。

かくして、余所見運転でうっかり轢き殺してしまった死体を山に埋めたかのような心境を胸に遅めに帰った私は晩飯を食べるわけです。食べながら、あー当分もしくは一生俺は家の飯食えなくなるんだなぁと思ったらちょっと涙腺に来そうになりましたが、そこは我慢です。いつも通りを装うのに必死でした。ここ数日ずっとそんな感じだったのも確かですし、仕事でどんだけ辛い目にあっても家族の前ではなんて事ないように振舞ってきたのが私でした。下手すると最後の日にその仮面を取ることは許されません。

まぁ、多分失踪を思い留まるならそこがターニングポイントだったんじゃないかなぁと思ってます。

仮面を脱ぐことが出来なかったから実体を残すことが出来なかった。実にファントムでしょう?

寝る前に部屋の中の必要そうなものを車に平静を装い運び込み、部屋の目立たないところに失踪宣言書と呼ばれる書き置きを貼り、布団にくるまりました。これがまともな布団で寝れる最後の機会かぁとも思いましたが、多分そんなことはねぇな、寝たきゃたまにはホテル泊まれやと思うことにしました。

そんなこんなで日は昇り、いよいよ失踪決行日がやって来たのでありました。